fusion 360 の回転ジョイントの競合について

 3DCADを始めるきっかけは部品を組み合わせてそれを動かしてみることができることに大変興味があったからです。

 

 クランクとピストンなどを作ってくるくると動かすことができると次は当然の流れで、エンジンは多気筒化へと進んで行きます。

 

 構想は一足飛びにV型12気筒となり(星形エンジンは心の内で温めています)、どのエンジンにするかが次の問題点になってきます。fusion360の機能でカムシャフトのベルトドライブやチェーンドライブは動きを再現するのは初心者には難しそうなので、ギアトレーンかプッシュロッドタイプに限られてきます。

並列2気筒 OHCギア駆動 360度クランク

 構想は果てしなく広がるのですがCADの実力は上のモデルという状態です。

 

 ここらあたりまでは頭に思い描いたものをスケッチして押出していけば何とか形になって動いてくれます。

 

 そして夢は広がり頭の中では12気筒はロールスロイスダイムラーベンツかととどまるところを知りません。

 最終的にはお気に入りのP51ムスタングにも開発段階で積まれていた関係で資料の多いロールスロイスのマーリンに決めました。

 

 実物のエンジンではオイル潤滑が必要なところ(部品が組み合わさっている可動部のところ)にはfusion360の機能であるジョイント(剛性、回転、スライダ、円柱状、ピンスロット、底面、ボールの7種類)を使って作った部品を組み合わせていきます。

こうすることで部品同士が動くことができるのですが、ここで問題が発生しました。

 

 ピストンとコンロッドをジョイントしていた時に

ジョイントの組み方

 上の図のようにピストンのピン穴の次にピストンピンを選択すると先に選択したほうが後に選択したもののところに移動して組みあがるのですが、これをコンロッドとシリンダーを組んだものに組み合わせると”ジョイントの競合”が発生してエラーが表示されます。

 

 ジョイントの競合についてネットで調べても「競合箇所を修正すれば良い」とのことで「ここがこういうことで競合が発生しています」とは出てきません。競合するジョイントの回転ジョイントの旗のマークが赤く非情に光るだけです。

 

 12気筒のクランクとコンロッドをシリンダーに組んであとはピストンをジョイントすれば完成だというところまできて原因不明(自分だけ)の障害発生です。

 

 MRJもかくやともいえる状況で暗くなりましたが、いろいろ試した結果ピストンピンの長さとピストン側のピストンピンの接する部分の長さが異なっておりジョイントの位置をピストンピンの片方で決めたたコンロッドの中心とピストンの中心がズレてジョイントの競合が発生したようです。

 検査機能の計測コマンドであちこちの距離を測定してみてやっとわかりました。

ピストンピンとピストンの受け側の寸法違い

 ピストンピンの長さ124㎜のところピストン側の計測値が124㎜より長かったためです。(図は修正後のものです。)

 

 教訓1=「諦めたら終わり」

 教訓2=寸法はきっちりと定めておくこと

マーリンエンジンのコネクティング・ロッド

 クランクシャフト、ピストンと作ってきたので次はコンロッドです

 航空エンジン特有のフォーク&ブレードタイプです

 

 自動車用のV型エンジンは1か所のクランクピンに2個のコンロッドを取り付けるときコンロッドビッグエンドの厚さ分前後にずらして取り付けます。必然的にシリンダーブロックは左右で配置が前後してしまいます。

 コスト度外視しても妥協を極力排除する航空エンジン設計者とその上司は完全なる対象性?を求めてフォーク&ブレードのコンロッドを採用します。

コンロッド

 因みにピストンピンが付いているのはfusion360のジョイント機能を使い可動部分を作るときに実物のエンジンのようにコンロッドスモールエンドとピストンピン。ピストンピンとピストンのそれぞれに回転ジョイントを設定せず後者のみに回転ジョイントを設定することでジョイントの数を減らそうという魂胆があるからです。(ピストンピンの肉抜きを作らなかったのは単なる横着? It's Me!)

 

 コンロッドの断面を見てください

断面図

 アイビーム断面になっています。

"Connecting Rods: Steel I-beam connecting rods are of the fork and blade type. "

と見つけた資料にはあったので材質はアルミではなく鉄のようです。

 

 余談ですがドラッグレースのトップフューエルクラスで1万馬力超の出力を絞り出すエンジンのコンロッドはアルミ合金の無垢材のようでまったく軽量化、肉抜きなどない延べ棒の様なものが使用されています。

 

 それでもって今まで作ってきたものを組み合わせると

V12 クランク・ピストン・コンロッド 左端が前部

 こんな感じです  

 

60度V型 

 エンジンの右側ブレードロッド側をAバンク、左側フォークロッド側をBバンクと呼ぶそうです。

マーリンのピストンを作る

 本田技研様の資料より マーリンのボアとストロークは 137.16mm×152.4mmとなっておりますがボアを137.2㎜ ストロークを154.2㎜としてスケッチを描いていきます

 

 fusion360の押し出し、回転、切り取りなどのコマンドを使って形にしていきます。ここのところはサラリと書いていますが何分超初心者なので思ったようにことは運びません。

 しかし天は私に味方してくれました。そうです時間はあるのです。あと一回チャレンジしてみればよいのです(できるまで!!)。

成果物としてのピストン

 真ん中がくぼんだ形になっています。スーパーチャージャー付のエンジンだからなのかな?

下から見たところ

カット図

実際には下部ピストンリングにはオイルの逃がしあながあったりピストンピンのところにはスナップリングの溝があると思われますがそこらは割愛しています。

 

メッサーシュミットBf109のレストア本を見ていたらDB605のピストンはマーレー社のものが使われていました。マーレーのピストンは今でもレース用エンジンに使用されています。技術は連綿と生きているのですね。

 

 次はコンロッドを製作をお届けします。

マーリンの諸元

 エンジンのスケッチを描くにあたりいろいろと資料を漁ったところ本田技研様がマーリンの研究の一環としてエンジンを分解した報告書があったのでボアサイズやボアピッチなどを参考にさせていただきました。

 カムギアトレーン関係のギア構成とギアの歯数など大変参考になりました。

 

 まずクランクシャフトから作ってみます。 サイズは実物大で単位はmmです。

不明な所は妥当と思える数値を入れていきます。

クランクピン径 70.5
クランクピン長さ 58
クランクジャーナル径 85
クランクジャーナル長さ 46.2
クランクウェブ厚さ 25

V12エンジンは基本的に直6エンジンと同じクランクです。

クランク全体図  左が全部になりまます

図面を作っていて気付いたことがありました。クランクウェブには3種類あり

1.カウンターウェイト無し 2.カウンターウェイト中 3.カウンターウェイト大 となっており、1と3の組み合わせが4か所、2と2の組み合わせが2か所となっています。

 

クランク軸、クランクピンとも軽量化のため中空になっています。

中空加工のラインボーリングの邪魔にならないようクランクウェブは逃げを作っていて

正面から見るとこんな感じです。

クランク正面図 4か所の丸い穴をラインボーリング加工します

また、各穴の両端にはオイル漏れを防ぐためにふたが取り付けてあります。

クランクはここまで

ロールスロイス・マーリンを作ってみようかな?

fusion360 を使って3DCADの練習を始めました。

以前から興味のあった航空機用エンジンのマーリンを作ります。


写真を参考に部品を作ってエンジンを組み立ててみたいと思います。

 

まずは資料を探して、寸法を推測していくことからスタートです。