カム駆動ギアトレーンのちょっと変わったベベルギア
今回は作図で苦労したカム駆動ギアの話をします。まずはこの図を見てください。
クランクシャフト後端から垂直に上に伸びるシャフトが1本あります。少し上がったところで左右のバンクに分岐していますがここのベベルギアが今回のテーマです。

中間にあるZ22 からZ33二つに駆動が分散されていますがここの角度が問題です。
(因みに① Zに続く数字は歯数を表します。)
(因みに② クランクシャフト1回転するとZ18 は27/18=1.5回転し、斜めのZ33は
1.5×22/33=1回転となり、クランクと同じ回転数に戻ります。そして最後に18/36=
0.5回転となり最終的にクランクが2回転するとカムシャフトが1回転するという基本的な4サイクルエンジンの形になります。)
通常のベベルギアは軸の交差角度が90度になっていますが、カムシャフトやその他のパーツを配置してみるとここの交差角は片側34度(計測値34.3度)くらいです。
(あくまでも私の図面での話です 実機は何度なんでしょうね)


ベベルギアを作成するにはfusion360 のユーティリティにあるGF GEAR GENERATOR
で90°Bebel Gears を選択すればモジュールとそれぞれの歯数と圧力角を選べばギアのセットができるのですが90度のものしかできません、今回は90度ではないので悩みます。
インターネットでいろいろ見ると非常によくできたマーリンV12のアニメーションがあったのですが、ここのギアを90度ベベルギアを使って表現しているものがあり歯面が微妙な当たりをしている作品がありました。多分作者の人は十分に気付いていると思います。
そこでネット検索をした結果、偉大な先駆者たちを見つけヒントをもらいました。
任意の交差角を持ったベベルギアの作り方は簡単に説明すると以下のようになります。
スケッチに原点から垂直に中心線を引き大小のギアの直径と交差角を作図します。
次にスパーギアの厚さを0と考えて(この図ではスパーギアの底面がかみ合うとします)それぞれのオフセット平面を作り、条件に合ったスパーギアを配置します。

次にオフセット平面にスケッチモードでスパーギアを投影(プロジェクト)します。
噛み合う部分のモジュールを一つ選んでロフト機能で歯厚分1歯を作り、それを円形パターンで歯数分配置すれば下のようなベベルギアができます。

この説明ではわかり難いと思いますが何とか作ることができました。
歯車の話でもう一つ
クランクシャフトの回転を減速するスパーギアのセットですがこれもGF GEAR GENERATOR で作りました。モジュールはメトリックを選んだのですが多分インチかな? ピニオン側の現物写真をよく見てみるとモジュールの先が尖っているように感じました。多分これは転移歯車になっていてピニオン(クランク側)ギアの強度を上げているのではないかと考えます。
ロールス・ロイス・グリフォンの二重反転プロペラのピニオンも同様な形をしていました。
今回の教訓 『二度とやらないことを上手にできるようになる』
基本になった図面
透視図や断面のイラストや各種の写真、動画を見たうえで大元にになる図面として選んだのがこの図面です。

この図面をfusion360の機能でキャンバスの挿入として貼り付け、シリンダーボアピッチなどをもとに位置合わせ機能で原寸大に拡大します。
そして拡大した図面をもとにカムキャリアの厚さや、減速ギアの歯厚などを割り出していき、スケッチを描いていきます。

ここで重要なのがV型エンジンの描画方です。60度、90度などバンク角にかかわらずV型エンジンの側面図はシリンダー部分のみシリンダーを真横から見た形で描くので、シリンダーの図面は60度傾けた傾斜平面を作成してそこにスケッチを描くか、シリンダー関連(カムシャフト、バルブ、カムシャフトキャリア、ヘッドブロック)をあらかじめ作成してから60度傾けてクランクケースに取り付けるかの方法をとります。

こんな感じです。
クランクケースについては凹凸と補強用のリブ、エンジンマウント部や減速ギアの格納部など詳細寸法・正確な形状がわからず割愛した部分があります。
3Dスキャナーで計測すれば完全再現ができるかもです。
昔の人はドラフターに向かって冷却水通路、オイル通路などを正確に描きかつ鋳型の中子や収縮率などの要素を加えて図面を作っていたでしょうからたくさんのノウハウがなければ為しえなかったでしょう。
マーリンのバルブ駆動関係について ①
いろいろな写真や動画を見てバルブ駆動系のレイアウトを考えていきます。
1気筒につき吸気バルブが2本、排気バルブが2本ありそれぞれにカムフォロアーとカムプロファイルがあります。
1気筒分のパーツのレイアウトを作ってみました。

これはBバンク(進行方向左側)の前から6番目のシリンダーになります。若干太いバルブが排気側になるのでBバンクであることがわかりますね。
因みにカムシャフトの回転方向はプロペラと一緒でクランクシャフトとは逆回転になっています。
このレイアウトを使ってカムプロファイルの吸排気の角度を決めるために各部品をジョイントして動かしてみます。
ジョイントは全部で最低12個必要になります。
剛性ジョイント9個、回転ジョイント3個、スライダー4個 特にカムフォロワーなどはジョイントの数を減らすために同じ動きをする吸気・排気系の2個を1つのパーツとして作り回転ジョイントを少なくしました。
バルブの動きについてはスライダージョイントの設定でレスト位置を決めることにより、スプリングで元の位置に戻るような動きが実現できます。
また、非常に重要なのがアセンブリの項目で「すべての接触を有効にする」を選択することです。
バルブ長を長めに作っておきカムシャフトを回転させながらバルブの傘がバルブシートにあたるところをレスト位置として決定し、バルブの頭の方はカムフォロワーとカムプロファイルが同時に接触しないようにバルブの長さを調整します。

実際はカムフォロワーの先端にギャップ調整用のスクリューがありますが省略しています。
最大の難問がバルブタイミングです。集めた資料の中にはバルブタイミングの資料はなかったので、基本に戻って平均的なエンジンの吸排気のタイミングに合わせることにしました。

とりあえず1気筒分ということで排気バルブの100度遅れで吸気バルブが開き始めるという設定に決定しました。
とりあえず今日はここまで・・・
マーリンのヘッドブロック
ヘッドブロック製作について説明します。
まず資料を見てヘッドブロックまわりの造形を考えます。
排気側は各気筒独立して開口していますが吸気側は隣のシリンダーとも連通しているようです。これは吸気側はスーパーチャージャーからの空気を各気筒満遍なく行き渡らせるために、排気側は気筒間の排気干渉を避けるためだと考えましたがどんなもんでしょう。


上記のブロックが6個つながって片バンクを形成します。
CAD的に言うとスイープとミラーコマンドを使ってブロックをくり抜いていきます。
実際はこれに冷却水通路、ヘッドボルト貫通穴が存在するのですが完全に形状がわからないので、作っていません。

排気側のバルブ穴のほうが径が大きくなっているのがわかります。
因みにブロックを下側から見ると下のようになっています。

吸気バルブの方がバルブ径が大きいですがバルブステム径は細くなっています。
排気バルブは冷却用にナトリウムが封入されている分ステム径が太くなっています。
マーリンはバルブ挟み角がゼロで、トラック用のディーゼルエンジンみたいです。
自動車用エンジンなどでは4バルブの中心にプラグがあるのですが、マーリンはヘッドの吸気側と排気側にそれぞれ1本配置されており吸気側と排気側は別のマグネトーで点火されるようになっています。片方のマグネトーが壊れてももう片方で12気筒分の点火を担うことができるようになっています。
これは航空エンジンの常識ですね。
fusion 360 の回転ジョイントの競合について
3DCADを始めるきっかけは部品を組み合わせてそれを動かしてみることができることに大変興味があったからです。
クランクとピストンなどを作ってくるくると動かすことができると次は当然の流れで、エンジンは多気筒化へと進んで行きます。
構想は一足飛びにV型12気筒となり(星形エンジンは心の内で温めています)、どのエンジンにするかが次の問題点になってきます。fusion360の機能でカムシャフトのベルトドライブやチェーンドライブは動きを再現するのは初心者には難しそうなので、ギアトレーンかプッシュロッドタイプに限られてきます。

構想は果てしなく広がるのですがCADの実力は上のモデルという状態です。
ここらあたりまでは頭に思い描いたものをスケッチして押出していけば何とか形になって動いてくれます。
そして夢は広がり頭の中では12気筒はロールスロイスかダイムラーベンツかととどまるところを知りません。
最終的にはお気に入りのP51ムスタングにも開発段階で積まれていた関係で資料の多いロールスロイスのマーリンに決めました。
実物のエンジンではオイル潤滑が必要なところ(部品が組み合わさっている可動部のところ)にはfusion360の機能であるジョイント(剛性、回転、スライダ、円柱状、ピンスロット、底面、ボールの7種類)を使って作った部品を組み合わせていきます。
こうすることで部品同士が動くことができるのですが、ここで問題が発生しました。
ピストンとコンロッドをジョイントしていた時に



上の図のようにピストンのピン穴の次にピストンピンを選択すると先に選択したほうが後に選択したもののところに移動して組みあがるのですが、これをコンロッドとシリンダーを組んだものに組み合わせると”ジョイントの競合”が発生してエラーが表示されます。
ジョイントの競合についてネットで調べても「競合箇所を修正すれば良い」とのことで「ここがこういうことで競合が発生しています」とは出てきません。競合するジョイントの回転ジョイントの旗のマークが赤く非情に光るだけです。
12気筒のクランクとコンロッドをシリンダーに組んであとはピストンをジョイントすれば完成だというところまできて原因不明(自分だけ)の障害発生です。
MRJもかくやともいえる状況で暗くなりましたが、いろいろ試した結果ピストンピンの長さとピストン側のピストンピンの接する部分の長さが異なっておりジョイントの位置をピストンピンの片方で決めたたコンロッドの中心とピストンの中心がズレてジョイントの競合が発生したようです。
検査機能の計測コマンドであちこちの距離を測定してみてやっとわかりました。

ピストンピンの長さ124㎜のところピストン側の計測値が124㎜より長かったためです。(図は修正後のものです。)
教訓1=「諦めたら終わり」
教訓2=寸法はきっちりと定めておくこと
マーリンエンジンのコネクティング・ロッド
クランクシャフト、ピストンと作ってきたので次はコンロッドです
航空エンジン特有のフォーク&ブレードタイプです
自動車用のV型エンジンは1か所のクランクピンに2個のコンロッドを取り付けるときコンロッドビッグエンドの厚さ分前後にずらして取り付けます。必然的にシリンダーブロックは左右で配置が前後してしまいます。
コスト度外視しても妥協を極力排除する航空エンジン設計者とその上司は完全なる対象性?を求めてフォーク&ブレードのコンロッドを採用します。

因みにピストンピンが付いているのはfusion360のジョイント機能を使い可動部分を作るときに実物のエンジンのようにコンロッドスモールエンドとピストンピン。ピストンピンとピストンのそれぞれに回転ジョイントを設定せず後者のみに回転ジョイントを設定することでジョイントの数を減らそうという魂胆があるからです。(ピストンピンの肉抜きを作らなかったのは単なる横着? It's Me!)
コンロッドの断面を見てください

アイビーム断面になっています。
"Connecting Rods: Steel I-beam connecting rods are of the fork and blade type. "
と見つけた資料にはあったので材質はアルミではなく鉄のようです。
余談ですがドラッグレースのトップフューエルクラスで1万馬力超の出力を絞り出すエンジンのコンロッドはアルミ合金の無垢材のようでまったく軽量化、肉抜きなどない延べ棒の様なものが使用されています。
それでもって今まで作ってきたものを組み合わせると

こんな感じです

エンジンの右側ブレードロッド側をAバンク、左側フォークロッド側をBバンクと呼ぶそうです。